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2016年11月22日 (火)

第4回連続講座の報告

「日本国憲法公布70周年記念 連続講座 日本が再び『戦前』にならないために

 ~平頂山事件に至る時代と今の時代を比較して~」

 2016年11月14日(月曜)に,文京区民センターにて第4回の連続講座が開かれました。講師は朝日新聞編集委員の上丸洋一先生でした。


 今回の課題は,

 「マスコミの視点から ~ 新聞と戦争」

というものでした。
 総力戦である第2次世界大戦で,国民を侵略戦争に動員するために必須のツールであった新聞が,どのように戦争に巻き込まれ,やがて協力していったのかを振りかえるものでした。


 上丸先生の冒頭の発言は,

 「新聞で大事なのは,『何を伝えているか』ではなく『何を伝えていないか』だ」

との指摘がありました。
 そして11月4日の衆議院でのTPP強行採決について,読売新聞が見出しからも写真からさえも「強行採決」の文字を排除していた例を挙げて,「戦時報道でもこれは同じだった」との指摘がなされました。



 実は,平頂山事件(1932年9月16日)の直前まで,朝日新聞は軍部の独走を批判していました。


 1930年4月のロンドン海軍条約で,保有艦船を制限する条約を若槻礼次郎が調印したことについて,軍部は統帥権の侵害であると政府を批判していました。
 これに対して朝日新聞は,

 「国防のことを決するのは立憲政治にあっては内閣の責務」
 「立憲の常道に基づいて堂々と主張され,検討さるべき」

との正論を主張しています。


Img_4749 ところが1931年9月18日に,関東軍と石原莞爾が謀略により満州事変(柳条湖事件)を引き起こすと,主張が一変してしまうのです。
 これを契機に,朝鮮に駐留する日本軍(朝鮮軍)が中国東北部に独断越境するという問題がありました。
 当時,朝鮮は「国内」でしたが中国は「外国」であり,外国に兵を出すのであれば,統帥権者
である天皇の裁可を要するべきなのに,朝鮮軍は独断で越境してしまったのです。






 このときの朝日新聞の主張は,

 「事実において陸軍が動いた以上は,それは帝国陸軍が動いたのである」
 「軍部と
政府とのあいだに齟齬があり疎隔があるかの如き印象を内外に与ふることはもっとも避くべき」

として,軍部の独走を追認してしまいました。わずか1年前の論調と180度違ってしまったのです


 しかもこのころ新聞記者らは,実際には満州事変が関東軍による謀略であることを知っていました。新聞ではなく雑誌などでは,新聞記者も軍部の独断専行を批判していたのです。


 けれども新聞紙上では,事実追認・強硬論一色になってしまった。なぜだったのか。

 上丸先生はこのことについて,右翼や軍部からの圧力,政府による言論統制,沸騰するナショナリズムに引きずられたことなどを指摘
しています。
 「軍部」を除けばあとは,この間の朝日新聞バッシング後の現在の世論と同じではないかと恐怖を感じました。

 上丸先生は,「新聞は戦後から再出発した。新聞の責務は二度と戦争を起こさないことだ」と力強く語ってくれました。
 この逆風の世の中で,新聞とともに私たちも抵抗しなければと考えさせられました。

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